COLUMN

“成長した子供”であるみなさま(施設関係者・保護者のみなさま)へ。
こんにちは、キボロコ代表の榎本です。

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『インクルボード』のリスクとハザードのお話

インクルボードは予め用意されたルールで遊ぶだけでなく、遊び方は発見して、あるいは工夫・改良していくものであると思っています。なので、インクルボードで遊んでいる子供には、基本どのように遊んでいても、それは遊び方として間違いだと指摘することなく、自由に遊んでもらっています。

女の子は、時間が経つと、ままごと遊びをしていたり、男の子は、球を投げ入れたりして遊ぶこともしばしば見受けられます。まったく予期しない遊び方を子供たちは、次から次へと発見していきます。

そういう遊びの工夫を見ていると、この遊具の開発当事者として、危険性への配慮ということは、常々考えさせられます。想像できない危険も時に出現します。いや“時に”ではなく、遊びの中には、想像もできない危険が必ずあるものと思うようにしています。

ただ、遊びの中に含まれる危険は、イコール悪で根絶しなければならないものとは、思っていません。むしろ、危険に気づき対応できるようになることは、遊びで学ぶ、とても重要なことと思っています。遊びで怪我をした経験は、様々な実生活での危険を回避する力を育むものだと考えています。しかし、子供が想定しえない大きな事故につながるような危険は、遊具の開発者として避けなければなりません。

国土交通省は、「都市公園における遊具の安全性に関する指針」において、リスクとハザードという言葉で、その違いを説明しています。長く詳細な説明なので、私なりに、かなり端折って読み解くと、リスクは遊びの価値の一つ、遊びの中で危険を知り、挑戦したり回避したりすることを学ぶことは子供の成長には大切なこと。しかし、ハザードは、重大な事故につながる恐れがある危険のことで、これは遊びで体験していいものであるはずはなく、除去に努めるべきものということ。そのように解説しています。

そこで、開発者はハザードをどのようにして避けるのかということですが、私はハザードとして実現してしまった過去の事故事例を、よく知ること、学ぶことが大切と考えています。そして、その事例に通じるものが自身の遊具に存在しないかという点検を心がけています。

もう一つ重視していることは、子供たちの遊びをよく観察することです。ハザードは、遊具の構造欠陥において生じるものもあれば、人的な子供の遊び方に起因するものもあります。例えば、ふざけすぎて突き飛ばすなどです。遊具開発者は、「その事故は、遊具の性能・機能とは関係ないので、私の関知することではありません」では許されません。遊びにおいて「心の手引き」をする必要があると思います。

話がそれてしまう恐れがありますので詳細は別の機会に譲ろうと思いますが、遊具で遊んでいるときに、いじめが見て取れれば、それは、私はハザードと捉えます。国土交通省が遊具のハザードとは定義しませんが、遊具開発・製造者は、そのこと含め、遊具で遊ぶこと起因で起こることに無関心であってはなりません。

事故は物理的な欠陥より、心の欠陥から生じることのほうが大きいのではないでしょうか。「突き飛ばして、落下して大けがをした」という場合、落下しても安全なように、クッションを設置するという対処よりも、そもそも、なぜ突き飛ばしたの?と、そこに立ち入ることが大切なこと思います。そういう意味でも、子供の遊びをよく観察することは、保護者含め周りの大人みんなが心がける必要があるのではないでしょうか。

→「3:理想のインクルーシブ遊具は、ハンディキャップある方に手加減しない!? というお話」につづく